LEMONADE THINGS (@nishino_chekhov)

主に技術関連のレポート、作成資料の配置など

2017/11/14 MasterCloud#7 参加レポート(メモ)

◆イベントタイトル
【MasterCloud×ヒカ☆ラボ 】~Infrastructure as Code~

◆日時|場所
2017/11/14 (Tue) 19:00 - 21:30 | レバテック株式会社

◆イベント詳細

atnd.org


ハッシュタグ
#MasterCloud

◆スライド・動画
https://mastercloud.jp/#tab-07


※以下、講演順から変更して掲載します


--- セッション① ---


オリンピック公式クラウド*アリババクラウドのテクノロジー
奥山 朋 氏 (アリババクラウドインターナショナルグループ)

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<アリババクラウドについての紹介>

・オリンピック公式クラウド
アリババクラウドはオリンピック公式クラウド。2018韓国平昌から10年間、冬季含め6大会にまたがる長期契約である。なぜ我々が公式の座を掴んだか。ひとつは資金力。カネです(笑)。でもそれだけではない。IOCにスケーラビリティやセキュリティ面を評価してもらえたから選ばれた。

・スケーラビリティ事例:シングルズデー
11/11は中国で消費が伸びる「シングルズデー(ダブルイレブン)」。
我々の運営している世界最大のECサイトであるalibaba.com、その日いちにちの売り上げは2.8兆円。郵便物の総量は8億個を超える。ちなみに楽天は一年間で3.3兆円の売り上げなので、比べるとスケールが分かると思う。
このシングルズデーのシステムを支えているのが我々のクラウド

・セキュリティ事例:alipay
世界最大のFinTechであるスマホ向け決済サービス、「Alipay」。中国で知らない人はいない。6億人の会員がいる。
支払履歴から信用度をスコア化し、ローン判定を数分で完了させることを実現している。さらに、常にハッキングなどの攻撃は当然来る中でサービスを運営している。その技術があるから、クラウド自体もセキュア。

ビッグデータ活用顧客事例:zc rubber(中国一のタイヤメーカー)
タイヤ製造において、品質を維持しながらコスト削減したい。
そのニーズ実現のために導入されたのが、ラインに仕掛けた操作に連動するシステム。
製造過程で温めたり、冷やしたり、という値を取得し、分析し、専門家の指南を基にパラメータを変える。どのパラメータなら最も低コスト&高品質を実現できるか。これをまさに実現した。開発開始から半年程度で既に本格稼働している。中国ではこのように、ビッグデータ活用は夢物語ではなく実用レベルまで昇華されている。日本でもしやろうとしたら、検討に一年、PoCに一年、といったテンポではないか。


<セッション②感想>

・アリババクラウド、熱い。
資金力(ECとAlipayの強さ)、顧客数(中国人口の多さ)、個人情報の活用ルールの緩さ(緩く使えるから量子コンピュータの実験なども中国で行われているらしい)。このあたりを最大限活用している。先日、AWSが中国市場撤退というニュースもありましたが(後日Amazonは否定)、中国はそれ単体で市場が大きく、かつ他国参入は障壁があるので、競合他社との争いにも強い資金力を持って対抗できるでしょう。世界市場でもAWSとの全面対決は近い。

・ちなみにこのセッションの前に、Serverlessconfでも代表挨拶されていた吉田さん(株式会社セクションナイン)がアリババクラウドの使用感をLTレベルで紹介していました。ログインIDを中国リージョンに設定すると日本にない多機能を使えるそうですが、UIは非常に見覚えある某社とほとんど同じだから使いやすかったとのこと。笑

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・本文では省略しましたが、ビッグデータ活用の実例としてイメージ認識で類似画像検索をやっていたりするそうで、「すっごい美味しい空芯菜たまご炒めを見つけたら、それに似た柄のスカートも探せます」、というネタが面白かった。

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--- セッション② ---

libspecinfra の概要と現状と今後

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宮下 剛輔氏(合同会社Serverspec Operations)


<人となり>
・一人で会社を運営しており、実態はフリーランスに近い。
 リクルートテクノロジーの技術顧問も担当。
 技術顧問と言っても、ひたすらOSS開発をやっているという感じ。

オライリーから出版されている2冊に関与。
Serverspec (執筆)
Infrastructure as code(監訳)

<Specinfraおよびlibspecinfraのご紹介>

・Specinfraとは?
 Serverspecから派生したRuby製のライブラリ。
 まず、OSやディストリビューションごとのコマンドの違いを抽象化する。例えば、CentOS(注:Red Hat Enterprise LinuxのクローンOS)のバージョン6と7で、コマンドが異なる個所について吸収し、裏側でよしなにやってくれる。
 また、環境(ローカル環境なのか、Docker API経由なのか)などによる実行形式の違いも抽象化する。

・Specinfra登場の背景
OSや環境ごとの違いを吸収できる類似ツールは他にもある(Chef, Puppet, Ansible, Itamaeなど)。しかし、それぞれ独自構造になっており、再利用性がないというのが難点だった。その点をクリアさせたのがSpecinfra。

・libspecinfra登場の背景
Specinfraはあまり使われていないのが現状。原因はRuby製なので、Rubyからしか使えないこと。この課題を解決する提案として、ライブラリ化してRuby以外からも使えるようにしたらどうかと考えた。それがlibspecinfraプロジェクト。

・libspecinfraの内容
共有ライブラリを提供するコア要素と、各言語のAPIとなる部分要素で構成される。
実装はRust(注:Mozillaによって開発されている新しめのプログラミング言語)。
※Rustを選定した理由は、Cとの親和性が高いことと、自分自身Rustを覚えたかったという動機から

・libspecinfraの現状
File,serviceまわりは実装済み。言語バインディングRuby,mruby,Pythonが存在。
Githubの「Libspecinfra/examples」リポジトリにサンプルコードあり。
まだプロジェクトは進行中の状況だが、ゆくゆくは、今後生まれるシステム管理系ツールすべての基盤とするというのが壮大な目標としてある。

<セッション②感想>

・わたしは基本的にアプリ開発担当なので、話題が畑違いすぎてだいぶ驚いた...
しかし、コンセプトが明快なので内容は理解。 オープン系言語では後方互換性が意識され、バージョンが変わったからといってこれまでの書き方がすぐに使えなくなるようなことはあまりないが、こういう環境レイヤーに直結する開発は、差異の吸収が課題となっているということを理解。インフラエンジニアの肌感覚に触れられたことが大きな収穫。


<全体感想>


・とにかくアリババクラウドに大注目ですね。12/12のMasterCloud#8では、アリババクラウド大特集をやるそうです(行きたいけど、AWSのイベントと被っちゃってるんですよね...)

・時間の都合上、他のセッションとLTのレポートは省略とさせていただきましたが、
そこぴーさん(Google社)のGoogleCloudに関するセッションについて一点紹介。「Googleが”いい意味で枯れた技術”を論文化し、GoogleCloudはそこからサービスを作っている」という紹介が冒頭にありました。クラウドベンダーはどんどん大量にサービスを提供しているので、ユーザー側からすると訳わからなくなりがちなのですが、幹となる基礎を論文に依るというのはさすが。

今回も大変勉強になりました。運営/講演者の方々ありがとうございました。